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鍼道秘訣集 序文2

之によって、人の病苦びょうくすくう薬師如来やくしにょらい慈悲じひの道理とおもいに、遠近えんきん貴賎きせん貧福ひんぷえらばず、すくうを以てもっぱらとしたまう。

薬師如来は、医薬や癒しに深く関連する仏です。その十二大願には「除病安楽」といった医療に関わるものだけでなく、精神的な苦痛や煩悩の浄化を願う「安心正見」や、重圧に苦しむ衆生の救済を願う「苦悩解脱」、そして飢えや渇きを助ける「飲食安楽」などが含まれています。

したがって、夢分翁は薬師如来の教えに従い、遠くの人も近くの人も、身分の高い人も低い人も、貧しい人も裕福な人も分け隔てなく治療を行い、撃鍼によってひたすら病に苦しむ人々を救おうと尽力されました。

 

ゆえにその名ほど無く四方にひいづ、これを意齋法橋いさいほっきょう聞き伝え、奇異のおもいをなし、千里の道をとおしとせずして、夢分のいえ尋行たづねゆき、師弟していやくかとうし、としつみ、月をかさねて奥義おうぎさずかり、ついに其の名をたこうす。

「千里の道を遠しとせず」は、夢分翁のもとを遠路はるばる訪れたことを意味するとも、奥義を授かるまでの道のりが長かったことを示唆しているとも解釈できます。

法橋は僧侶の位ですが、医師にも授けられました。

夢分翁の名声はほどなく広まり、これを聞き伝えに知った意斎法橋は、摩訶不思議に思いながらも夢分を訪問し、、師弟の契りを結び、月日を重ねて奥義を授かり、最終的には名声を上げるようになりました。