腎兪とは、腎を癒す(いやす)という意味のツボです。第二腰椎棘突起下縁の外方にあります。
下に東洋医学で腎の働きとした機能を整理しました。
1.精を蔵す。
①気血津液という体を養うものの材料の貯蔵
②生殖、発育、成長に関与 ⇒ 成長ホルモンや性ホルモンが該当?
③髓を生み骨を養う ⇒ 性ホルモンの働きと関連?
④髓を生み脳を養う ⇒ 脳機能の維持に関与?
④血になる ⇒ 腎臓のエリスロポエチン(ホルモン)は赤血球の生産を促します。
2.水を主る ⇒ 腎臓の尿を作る働き
3.納気を主る ⇒ 空気を吸う働きです。
4.志を主る ⇒ やる気と関連します。
5.恐を主る ⇒ 不安と関連します。
現代医学における腎機能の他、視床下部-下垂体-副腎系という内分泌機能、そして脳の神経伝達物質の機能が多く当てはめられているように思われます。そして、基礎研究はそれらとの関係性を示しています。
オスの老化促進マウスSAMP6に対する腎兪への鍼は、男性ホルモンのテストステロンを上昇させました。1)
卵巣摘出ラットに対する腎兪への鍼は、(卵巣がないのに)女性ホルモンのエストラジオールを上昇させました。また卵巣があるラットへの腎兪への鍼は、テストステロンを上昇させました。2)ちなみに、エストラジオールはテストステロンが酵素で変化してできます。
卵巣摘出マウスの腎兪へ鍼をした研究では、卵巣摘出後に低下する脳内のノルアドレナリンとドーパミンが増加しました。3)
1)2)は骨粗鬆症、3)は更年期後の精神症状関連の研究です。
鍼灸の臨床では、腎兪穴は腰痛や泌尿器疾患の他に、生理不順、男女ともで不妊症、勃起障害などの生殖器関連の症状や加齢にともなう症状によく用いられています。基礎研究の結果は、性ホルモン低下によって生じる問題に対して効果が期待できる可能性を示しています。
他のツボを追加してですが、自宅灸を行って頂いてプロゲステロンが上昇した事例もあります。
当院では、古典や臨床家の先生方の情報と基礎研究の結果を踏まえて、腎兪穴への施術を行っています。
1)Kasai S, Shimizu M, Matsumura T, et al. Consistency of low bone density across bone sites in SAMP6 laboratory mice. J Bone Miner Metab 2004; 22(3): 207-214.
2)Takeda A, Koike T, Urata S, Ishida T, Oshida Y,Effect of acupuncture of Shenshu (BL 23) on the bones of ovariectomized rats , J Tradit Chin Med, 2018;38(1):54-64.
3)Toriizuka K, Okumura M, Iijima K, Haruyama K, Cyong JC. Acupuncture inhibits the decrease in brain catecholamine contents and the impairment of passive avoidance task in ovariectomized mice. Acupunct Electrother Res. 1999;24(1):45-57.