「目付」は武士の職の一つです。胃は全身の維持と関連するので目付処と表現したのかもしれません。
胃の腑は、鳩尾の下と臍の上との間にあります。
これは、人体においてとても大事な部位で、一身の目付処です。
万物は、土より生じてまた土にかえります。
五行色体表における五味では「甘」は土に属しており、脾胃を養う味とされます。
「密」は、「蜜」の当て字だと思われます。漢方薬の丸薬は、蜂蜜で練り丸められていました。
他流では、胃の胕は虚しやすいため、甘味のする補剤の丸薬などを用いますが納得できるものではありません。
「実」とは、停滞や余剰により邪気が満ちた状態です。胃には飲食物がどんどん入ってくるため邪気が生じやすいとされます。邪気の停滞は、火邪を生じるため胃火がさかんになります。
なぜかと申しますと、日夜食する飲食物は、みな胃に入ります。ですからそれ以外の臓腑と違って実しやすく、入った飲食物が邪気となってしまうゆえに、食後に疲れ眠くなります。そして胃火が盛んになると飲食物を焼き、胃が乾くためさらに沢山食べたくなります。
土と水には相剋の関係があり、土の変調は水へ影響します。後の文中にこれについての解説があります。
ついには手足が腫れ、土が病んで乾いた脾土が腎水を吸い取り、腎の水もともに乾き、火邪が生じて尿閉を起こします。
「なづみ」は、停滞するの意味です。
もともと胃の胕が実であったことをわきまえず、腎虚や脾虚だからと補藥などの甘味を用いた結果として生じた邪気が心腹に停滞して却って拾秒になったのが、このような病の原因です。
「多々」は「ただ」の当て字か、もしくは「数が多い事」も含めての表現か?
これは、ただ燃える火に薪を投入するようなものです。また、甘い食べ物は腎水を増やすなどという人がいるが、これは誤りです。
「龍雷相火」について考察したいと思います。「龍」は中国の幻獣で、平素は水中に住まうが時が至ると水を離れて天へと昇ります。五行との関係では木に属す青龍があります。易では「震」の卦が雷の象徴で、後天八卦では東に配当され、五行では木に属します。相火は、腎が宿す臓腑を温める陽気で、肝にて旺盛になります。龍は水に住まうが木に属することは、五行の相生関係で水が木を生むことや相火の腎水と肝木との関係と重なり、また雷も木に属する事から、龍雷相火は、肝相火をいいかえているようにも見えます。
甘は、脾土の味です。土剋水の法足からも腎水にとっては大敵です。どうして、薬となるでしょうか?
このような間違いは、生きるべき病人も死に赴いてしまいます。まさに非業の死です。脾胃は実しやすく邪気をなしやすく、また龍雷相火の肝も実しやすく病となりやすいことから当流の養生鍼では、肝胃が亢進しないように鍼をします。