灸(きゅう)という漢字は「久」の下に「火」と書きます。「久」(きゅう)という字は、一般的にはひさしい、ながい、ふるいなどの意味で用いますが、説文解字によると「以後灸之、象人兩脛後有距也。」とあります。複数の辞書を見ているのですが、本によって解釈が異なるようです。
私なりに素人解釈してみると、これは後の灸の字で、人の両すねの後ろに距(きょ)があるのを象(かたど)ったものである。となるでしょうか、「以後灸之」については、後ろから灸をしていると解釈されているものあります。実際、漢和辞典では「久」は「灸」の原字であるとの記載があります。(新漢字林)「距」が何かという事が大きな問題になると思います。はなれるなどの動詞的な意味を外すと、「けづめ」というのが出てきます。「けづめ」とは、鶏の足の後ろに飛び出ている突起(とっき)のことです。両すねの後ろにある突起という事でしょうか?
ここでピンときたのですが、似ているものがありました。脛骨(けいこつ,すねの骨)の外側上顆(がいそくじょうか)です。ええ、これ「久」の字に見えますよね!では、ついでに「火」の字をいれてみると。「灸」の字となり、まるでお灸をしているようです。この辺りでお灸をする有名なツボというと「足三里」です。ひょっとしたら、「灸」の字は久しく(長きにわたって)足三里にお灸をする姿から生まれた象形文字なのかもしれません。足三里のお灸はお灸の代表格ような治療法だっかもしれないなと想像を膨らませてしまいした。
せっかく足三里のお灸の話になりましたので、最後に、足三里にまつわる有名な文章をご紹介します。吉田兼好の『徒然草』(1330年ごろ)より
「四十以後の人、身に灸を加へて三里を燒かざれば、上氣のことあり。必ず灸すべし。」
上気とはのぼせの事で、歳から考えると更年期障害(男女問わず)の症状かもしれません。私も40歳半ばなので、足三里にお灸をして頑張ることとします。