私が行っていた研究です。主な内容は、2018年2月にJournal of Chinese Medicine 誌に掲載されました。
Effect of acupuncture of Shenshu (BL 23) on the bones of ovariectomized rats (卵巣摘出ラットの骨に対する腎兪穴への鍼治療の影響), J Tradit Chin Med, Takeda A, Koike T, Urata S, Ishida T, Oshida Y,10 February 2018 https://doi.org/10.1016/j.jtcm.2018.02.004
引用につきましては、ルールに従って「論文」から行ってください。CT画像以外は、論文に載っています。こちらにあげた画像の無断転用はダメですよ。(^^)
中国伝統医学の古典、『黄帝内経』素問に「腎主骨(腎は骨を主る)」という記載があって、昔から腎と骨が関係すると言われていて、腎に関連する経穴で骨の治療ができると考えられていました。それについての基礎研究です。
卵巣摘出ラット(閉経モデル)の腎兪穴に継続的に鍼治療を行ったところ、卵巣摘出によって生じた急激なエストロゲン枯渇が引き起こす骨吸収(骨の分解)が有意に抑制されました。骨密度低下を十分に抑制することはできませんでしたが、マイクロCTによる腰椎の骨梁構造解析の結果、骨梁間隔(いわゆる骨の隙間)が広がって骨の脆弱性が高まる(骨折しやすくなる)事が抑制されていた事により、効果があったと言えました。骨吸収抑制について、再現性も確認できています。未公開のデータなので載せていませんが、私のスキルが上昇したころの実験なので、論文のものよりばらつきが少ないです。
また、エストロゲン枯渇にともなう、体重増加の抑制が観察されました。
卵巣があるラットへの鍼刺激では、体重の変化が起こらなかったため、鍼の効果だと言えます。
また、継続的な腎兪穴への鍼治療は、卵巣外でのエストロゲン合成を誘導し循環エストロゲンを上昇させました。しかし、骨吸収抑制や体重の変化が生じた時期に有意な循環エストロゲン増加はありませんでした。
ちなみに卵巣摘出ラットの循環エストロゲンが増加していないのに、エストロゲン枯渇による症状を鍼治療が抑制したという報告は他にもあります。
卵巣摘出ラットにですが、腎兪穴への鍼治療は、骨吸収を抑制する。
骨密度に対する効果は限定的ですが、骨構造解析により、有用であったと言えます。
また、エストロゲン枯渇に起因する体重増加を抑制し、そして継続的治療は性腺外エストロゲン合成を促進しました。
効果の機序については、いろいろ調べて検証する必要があります。アヤシイところの予想はついています。
私は現在研究のフィールドがありません。もし、興味を持たれた研究者の方や施設の方などは、お気軽にご質問、お問い合わせください。再現実験のための細かなノウハウ(どうやってラットへ鍼をするかなど)や情報を提供させていただきます。