頭痛は「前額、頭頂、側頭、後頭」という頭部に限局した痛み全般を指します。2015年度の国民生活基礎調査によりますと、頭痛は女性では千人あたり50.6人、男性では21.3人とよくみられる症状で、とくに女性では5番目に多い症状ですが通院率が低く、1997年のsakaiらの大規模調査によると、片頭痛を訴える患者さんの69.4パーセントが未受診であったと報告しています。
頭痛を訴える患者さんの大半は、他の病気がない原発性頭痛で慢性的な経過を取ることが多いです。生命に直接かかわる病気ではありませんが、中等度以上の頭痛は社会生活の質や仕事の能率低下を引き起こすため、経済の損失にもつながると考えられています。
一般的に鍼灸治療で対象とする頭痛は原発性頭痛です。主に痛みを感じているのは筋と血管で、慢性の症状が多いです。
コクラン(医療エビデンスのデータベース)では予防的な片頭痛の鍼治療について「鍼療法は、進んで本治療を望んでいる患者のための治療選択肢として考慮すべき」、緊張型頭痛では「発作性または慢性の緊張型頭痛の治療に有効である。」と結論づけています。
また慢性頭痛を訴える患者さんの中には、大後頭神経痛や三叉神経痛という神経痛、眼、歯、副鼻腔の疾患、帯状疱疹が頭に出るなどの場合もあるので鍼灸師は鑑別する必要があります。
ちなみに命に係わる頭痛は、「頭を金づちで殴られるような」というような強い症状です。頭をぶつけたりした後に頭痛が続いたりした場合は、緩やかな脳血管の出血も考慮します。