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鍼灸でなぜ血流が良くなるか

鍼灸治療でなぜ、血流が良くなるか?

1.CGRPによる血管拡張

鍼刺激を行うとその局部において軸索反射により神経終末よりカルシトニン遺伝子関連ペプチド (calcitonin gene-related peptide;CGRP)が放出する事により、血管が拡張することが知られています。軸索反射とは、皮膚などの機械刺激による神経の信号が脊髄そして脳へ向かうだけでなく、刺激された神経の別の枝へ伝わり局部へ戻ってきて神経の末端よりCGRPを放出する特殊な反射です。末梢の感覚神経ではAδ神経線維とC神経線維に顕著に発現しています。Aδ神経の受容器は鋭い痛みを生じさせる機械刺激に反応する神経で、熱刺激やカプサイシン(ドウガラシの辛み成分)に反応することも知られています。もう一つのC線維の終末にはポリモーダル受容器があり、これは鈍い痛みを生じさせる機械刺激、熱刺激、冷刺激そして化学刺激など複数の刺激に反応する受容器で、鍼と灸の両方に反応するため、鍼灸と関連深いと考えられています。

Lars Edvinsson, Tony W. Ho. CGRP receptor antagonism and migraine. Neurotherapeutics. 2010 Apr; 7(2): 164–175.

 

 

2.一酸化窒素による血管拡張

従来、鍼灸による血管拡についてはCGRPで説明されることが多かったのですが、2013年に関西医療大学の木村らが、皮膚への鍼刺激による皮膚の血管拡張には、主に一酸化窒素(NO)が関わっていることを実験で証明し報告しています。NOは強力な血管拡張物質でこれが鍼刺激によって血管内皮細胞へ放出されることが確認されたことは、鍼による血管拡張作用機序の裏付けとなる大きな発見です。

Kimura K, Takeuchi H, Yuri K, et al. Effects of nitric oxide synthase inhibition on cutaneous vasodilation in response to acupuncture stimulation in humans. Acupuncture in Medicine 2013;31:74-80.