• テーラメイドな鍼灸を目指して

鍼灸の効能について

血流増進、筋緊張の緩和とバランス調整

 主に軸索反射※1による血流増進と筋交感神経抑制※2よる緊張緩和が、筋の痛み症状の緩和や疲労回復につながると考えられています。
※1 鍼灸の刺激は神経を伝わって脊髄や脳へ向かいますが、刺激部位近くの血管を広げる神経にも信号が伝わって血流を増加させます。
※2 筋の交感神経(自律神経)の過剰な興奮は、過剰な緊張や血流低下を引き起こし痛みの原因になります。

組織修復の促進

 鍼を体に刺すと、微少な組織損傷が起こります。これは、組織の修復しようとする働きを引き起こします。スポーツ傷害に対する効果や美容鍼灸の効果は、この組織修復の促進が関連していると考えられています。

脳内の痛み緩和物質(βエンドルフィン)の放出による鎮痛

 特定のツボに鍼を刺して通電刺激を20分ほど行うと、全身の痛みの感度が下がります。一般に鍼麻酔と言われているもので、とくに頭顔面部や頸部の鎮痛に優れており、実際に手術が行われたことがあります。現在では、麻酔にアレルギーがある患者さんに対する抜歯や、無痛分娩に使用されることがあります。最近では、線維性筋痛症の治療に応用した臨床研究がおこなわれており、一定の結果が出ています

アデノシンによる鎮痛

 鍼刺激を行った部位で、アデノシンと呼ばれる物質が上昇し鎮痛作用が生じます。この物質はアデノシンA1受容体を介して細胞に作用し、結果として神経細胞膜電位の過分極を引き起こします。すると神経の興奮が抑制されるため、鎮痛作用が起こると考えられています。

自律神経の調整を介した内臓や内分泌の機能調整

 古来より、鍼治療は内科系の治療に用いられていました。体性自律反射と呼ばれる体表への刺激が自律神経機能を調節して内臓や内分泌(ホルモン)の調整へつながると考えられています。

お灸と免疫調整

 昔からお灸をすると病気になりにくいと言われていて、お灸と免疫系とは関係が深いと言われていました。これは、お灸により生じた熱ショックタンパク(Hsp70など)が大きくかかわっていると考えられています。

 熱ショックタンパクは細胞を守るために働く物質で、生体防御活性(さまざまなストレスに対する抵抗)、免疫増強、抗炎症の効果が知られています。

 免疫関連では、白血球のなかのヘルパーT細胞が増えるようです。これはB細胞に抗体(病原体の無力化や排除に関わる)を産生させたり、マクロファージに病原体を貪食(食いつかせる)させる指令を出す細胞です。

 免疫増強効果を応用して、現在NPOのモクサアフリカが、足三里というツボへのお灸をウガンダで広げ、結核患者さんで効果が上がっています。マケレレ大学が行った臨床研究は、論文として報告されました。

 また抗がん剤治療による白血球減少に対してお灸が効果がある可能性があり、応用が望まれます。

脳の血流増加、脳由来神経栄養因子の放出、脳内免疫の調整

  鍼刺激が腦の血流を増加させることは、以前より知られていましたが、ここ最近の研究で、脳由来神経栄養因子(BDNF)放出や脳内免疫の調整を通じて脳機能調整行う事が分かってきて、うつ病や不安などの精神症状に対する応用が期待されます。