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肩こり

肩こりと鍼灸

肩こりとは「後頭部から項、肩にかけて不快感、違和感、鈍痛などの症状をきたす愁訴」で、患者さんは「凝り、張り、痛み、重い」など多彩な症状を訴えます。2015年度の国民生活基礎調査によりますと、肩こりは女性で最も多い、男性では2番目に多い愁訴です。

2001年国民生活基礎調査では、肩こりの全通院者のうちあんま・マッサージ、はり・きゅう、柔道整復(接骨・整骨)の施術所を受診する患者は59%であることが報告されています。

鍼灸臨床では主に、大きな基礎疾患がない原発性肩こりを治療対象としています。また、肩こりの原因となる基礎疾患があっても、鍼灸治療が適応するものや現代医療に対する補完的治療が有効と考えられているものがあるため、基礎疾患がある症候性肩こりに対しても症状を和らげるための治療を行う事は少なくありません。

当院では、現代医学で用いている理学検査と東洋医学的診察を行って病能を推測した後に、適応かどうかを判断して治療を行っています。

症候性の肩こりを引き起こす主な疾患

整形外科領域 頚椎疾患、胸郭出口症候群、動揺性肩関節、肩甲骨異常
内科領域 高血圧、狭心症
自律神経疾患 自律神経失調症
耳鼻咽喉科領域 メニエール病、上咽頭炎
眼科領域 緑内障、眼精疲労
歯科領域 顎関節症、咬合不全(かみ合わせが悪い)
精神科領域 うつ病

肩こりの原因

現在では、肩こりの症状は単純な肩や首の局所における筋肉の障害だけではなく、本来体を調整するいろんな機能が障害を起こして、それが頸肩部の筋肉の障害を誘発して肩こりという症状が生じると考えられています。そしてそのために肩こり以外の症状をともなう事が少なありません。ですから、苦痛のある頸肩部の筋のみの治療では、治療が難しい場合がああります。
最近では、肩こりの症状自体は、主に筋交感神経(自律神経)、筋紡錘(筋の収縮を感受するセンサー)と運動神経(筋を収縮させる)、痛みの神経、筋血流の障害により引き起こされると考えられています。
筋交感神経は、筋内の血管や骨格筋線維を支配している自律神経ですが、環境や心理的ストレッサーは筋交感神経の活動が亢進させて、筋の血流量を減少させ、そして筋を緊張させます。そして何らかの原因で筋や末梢神経に損傷がある場合、持続する筋血流の低下と筋の過緊張と弛緩不足(ゆるまない)を引き起こして、顕著に痛みなどの症状が出現すると考えられています。
そのため、慢性的な肩こりの治療では、自律神経を調節する治療、症状がある局所の治療そして原因疾患に対する治療を適宜選択して行う必要があります。

 

鍼灸治療

鍼灸治療は、刺激を加えた局所の血流を増加させますし、また自律神経失調や運動神経の過剰な興奮を改善して全体的な血流改善や筋の弛緩を促すことが期待できるため、肩こりに適した治療法であると考えられいます。そして東洋医学では、全身的な機能調整(臓腑の調整)と症状部位の循環を改善する(経脈のめぐりをよくする。)事を目的として治療をするため、機能調整のために、肩や項と離れた手足や腹部などにも治療を行います。
東洋医学では証とよばれる病態分類のもとづき治療を行う事が大事とされていますので、肩こりについても証を判断し、適切な治療する経穴(ツボ)の選択に利用します。

肩こりの証分類例

症候
風寒 肩こりとともに、悪寒がある。発熱がある場合もある。※風邪の引きはじめ
気滞 部位が定まらない鈍痛や張ったような痛みで、心理的ストレスで悪化する。運動や何かに夢中になっている時は症状が軽減する。
気滞血オ 部位が定まらない鈍痛や張った痛みと、限局性の刺すような痛みが両方ある。
肝血虚 目を使うと悪化する肩こり。目の疲れやかすみをともなう。
肝腎陰虚 頸肩部のこわばりとともに、目の疲れ、かすみ、乾き、腰下肢のだるさまたは痛み、耳鳴、難聴などの症状がともにみられる。