• テーラメイドな鍼灸を目指して

深呼吸で気持ちをおだやかに~肺は治節を主る~

  • 2018年9月11日

今回は、「深呼吸で気持ちをおだやかに」というテーマでお話したいと思います。なぜ、このテーマを選んだかというと私、最近「イライラ」するからです。(笑)

さて、そもそも「イライラ」ってなんでしょうか?広辞苑を開いてみると、①棘(とげ)などが皮膚や粘膜を刺激する不快な感触。②ものごとが思うようにならず腹立たしいさま。③イラクサ(とげがあります。)の異称です。外環境と人間の感情に同じ言葉が当てはめられているのが面白いですね。「ストレスがたまってイライラする!」という類の発言はよく聞ききますね。そして、イライラする人のうちの一部は「具合が悪い」などと言い出します。元々、ストレスに対する体の反応は外敵に対する防御として発達した機能で、気分がたかぶる、体を緊張させる、心拍を上げる、血管を収縮させる、呼吸が速くなるなどが起こります。このストレスの反応なのですが、精神的なストレスがあっても同じ様に起こります。外側と内側の両方のストレスに「イライラ」するので言葉の意味に①と②があるのでしょうね!昔の人って聡明だと思います。

一時の「イライラ」は防御反応として良いのですが、長く続く「イライラ」は具合を悪くします。イライラが引き起こす反応は、体を臨戦態勢にする「交感神経」の働きによって起こっています。交感神経の働きが増しているときは、休養やリラックスに働く「副交感神経」の働きが弱くなっています。そして、臨戦態勢が長く続くとだんだん心も体も疲れてきます・・・。

心身を健康に保つには交感神経と副交感神経の働きのバランスがとても大事になるのですが、この二つの神経系は「自律神経」と呼ばれていて、自動で働いているため自分の意志でコントールするのは困難です。そういう訳で、調子が悪くなると非常に困ってってしまうのです。

ところが自律神経で唯一、自分の意志で容易に自律神経系に働きかけることが出来る部分があるのです。それは「呼吸」です。腹式でゆっくりとした深呼吸を行うと副交感神経の働きが強くなって交感神経の働きがおとなしくなってきます。イライラしているときは、交感神経の働きが強くなって呼吸は浅い「胸式」になっています。そういう時は、意識して深く息を吸ってゆっくりした呼吸を続けましょう。だんだん、イライラが静まって気持ちが落ち着いてきます。

中国伝統医学の古典『黄帝内経・素問』の中に「肺者.相傅之官.治節出焉」肺は相傅(そうふ)の官、治節出(ちせつい)ずという文章があります。意訳すると「肺は君主(心のこと)を助ける官で、(内臓の)管理や調節を行います。」となります。君主の「心」は心臓の働きとこころ、つまり脳の働きを示しています。古代中国人が呼吸による自律神経調節が心と体を整えることを知っていたのではないかと伺える内容ですね。中国の健康法「気功」や「座禅」では、「調身、調息、調心」という基本があります。解釈は複数あると思いますが、体を動かし姿勢を調え、呼吸を調えれば、心が調うというところでしょうか。

仕事や人とのやり取りで「イライラ」を感じたら、背筋を調えて思いっきり息を吐いた後に、目を閉じて、しんどくない程度にゆっくり深呼吸を繰り返し、呼吸をしている感覚に意識を向けましょう。だんだん落ち着いてきますよ。

深呼吸をしても、イライラが落ちつかずしんどくなってきたら、「鍼灸院」へ行ってみるのも良いかもしれませんよ。(鍼灸は交感神経の高ぶりを鎮めて副交感神経の働きを強めます。)