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更年期うつに関する、三陰交穴を使った鍼の基礎研究の紹介

  • 2019年1月10日

An estradiol-independent BDNF-NPY cascade is involved in the antidepressant effect of mechanical acupuncture instruments in ovariectomized rats
2018年の4月にScientific Reports誌に掲載された韓国東洋医学研究所のSu Yeon Seoらが発表した「卵巣摘出ラットへの鍼治療による抗うつ効果はエストロゲン非依存性BDNF-NPYカスケードに関与する」というタイトルの論文です。

更年期うつの基礎研究で、卵巣摘出ラット(更年期障害モデル)の足のうちくるぶしの上にある三陰交に鍼をした実験です。ヒトでは、三陰交はいろいろな女性の疾患に使われる有名なツボです。

エストロゲンの欠乏は、海馬の脳由来神経栄養因子(BDNF)を減少させ、結果として海馬の神経ペプチドY(NPY)が減少し、うつ病や不安関連症状と関連すると考えられています。卵巣摘出ラットへの三陰交への鍼刺激は、エストロゲンは血漿でも海馬でも上昇しませんでしたが、成熟BDNFとそのレセプター、そしてNPYを上昇させ、行動量の低下などのうつ病様行動を改善させたという内容です。

専門家の話だと鍼によるうつ病の治効機序には、BDNFや他の神経栄養因子、そして脳内の複数のサイトカイン(ホルモンみたいなもの)の動態が関与していることが推察されていて、セロトニンなどの神経伝達物質の調整とは異なる治効機序じゃないかと考えられていてるそうです。

基礎研究の内容がすぐにヒトに直結するわけではありませんが、ツボへの刺激によってこのような現象が起こるという事実は、鍼灸にたずさわるものにとっては大きな支えになります。

文献のURL : http://www.nature.com/articles/s41598-018-23824-2