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合谷(ごうこく) ~痛みや顔面部の症状によく使われるツボ~

  • 2018年12月4日

合谷(ごうこく)

 東洋医学の分類では大腸の原穴(代表のツボ)とされています。このツボは、一般にもよく知られているツボの一つです。

 場所は、現在の日本の教科書では、手背(甲の方)で第二中手骨中点の橈側(親指側)とされています。場所については、別説や臨床経験で位置をずらしたものがありますが、概ね類似しています。日本の灸の名人である澤田健が使っていた場所は、第一、第二中手骨が交わる関節の上の動脈の上で他のものよりかなりずれていますがお灸をする場合はこちらの方が優れているという経験なのでしょうか。

 期待する効能については諸説入り乱れていて、古文献や臨床家の経験で述べられている症状は、耳鼻科疾患、眼科疾患、消化器疾患、歯科口腔疾患などと様々です。これらを整理してみると、古来より伝えられている「大腸の経脈」という機能系が管理している範囲とよく似ています。美容や顔面部の症状や肩こりによく使われているのは、大腸の経脈が顔面や肩を流れているとされているからです。理性的には顔面部や肩に効くからそこを流れている事にしよう!と古代人が考えたと思うとイライラしません。(笑)

 現代中医学の経穴書では、気をめぐらして体の機能をととのえる(専門的には理気と言っています)、そして痛み(中医学では、痛みは気の停滞と考えています)を止める経穴という記載がよく見られます。

 東洋医学における「気」という言葉は、形態のもつ「機能」を指していると考えていただくと現代人にも受け止めやすいと思います。痛みに関して「合谷」は、いわゆる「鍼麻酔」に使われるツボで、低周波鍼通電刺激(鍼に電極を付けて刺激します。)を30分ほど行うと、脳内モルヒネと言われているエンドルフィンが増加して痛みが緩和されることが知られています。1971年にニクソン大統領が訪中した時に一躍有名になった技術で、実際に外科手術に応用されました。鍼麻酔の医療への応用は、現在は下火になっています。個人的には、歯科領域や無痛分娩で広く応用されたらいいなと思っています。

まとめると合谷は、大腸の経脈が流れているととされる部位の機能失調を調整する、そして痛みを緩和させることを期待して使用するツボというところでしょうか。