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二日灸について

皆さんは、二日灸と呼ばれる年中行事をご存知でしょうか?江戸時代や明治時代に行われていた旧暦の二月二日と八月二日に無病息災を期待してお灸をすえる習慣で、この日のお灸は倍効くと言われていました。

奈良女子大学学術情報センター蔵 當時増補大日本年中行事大全より 二日灸
https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100258852/viewer/36

二月のお灸は如月灸とも呼ばれています。二日灸の習慣は、俳句の季語としても使われているぐらい浸透していたようです。

二日灸花見る命大事也 高井 几董 (1741-1789)

かくれ家や猫にすゑる二日灸 小林 一茶(1763-1828)

死はいやぞ其きさらぎの二日灸 正岡 子規(1867-1902)

二月と八月にお灸をする事について、貝原益軒(1630–1714)の養生訓においては次のように述べられてます。

陽氣不足の人
脾胃虚弱にして、食滞りやすく、泄瀉しやすき人は、是、陽氣不足なり。
殊に、灸治に宜し。
火氣を以って土氣を補へば、脾胃の陽氣發生し、よくめぐりてさかんになり、食滞らず、食すすみ、元氣ます。

毎年二八に、天樞水分脾兪腰眼三里を灸すべし。京門章門もかはるがはる灸すべし。
脾の兪胃の兪も、かわるがわる灸すべし。天樞は尤もしるしあり。脾胃虚し、食滞りやすき人は、毎年二八月灸すべし。~

二月と八月に設定した理由はよく分かっていませんが、(資料見つからず・・・)旧暦のこの時期は、季節の変わり目だったり、農作業が忙しかったりする時期のため、体調を整える必要性から、習慣としてお灸をすえていたのかもしれません。
さて、何故二日にお灸をしたのでしょうか?これについては、私見となりますが、月の満ち欠けと関連していると考えています。旧暦の二日という事に重要な
意味があると思います。

黄帝内経・素問・八正神明論 第二十六に次のような記述があります。

~月始めて生ずれば、すなわち血気始めて精にして、衛気始めてめぐる。月郭満つればすなわち血気実し、肌肉堅し。~

これはについては、月が満ちはじめると血気が潤滑にめぐりはじめ、満月になると血気が充実して肌肉が堅くなるという事を示していると考えられています。

旧暦は太陰暦です。月の満ち欠けを元に作られた暦で、各月は新月となる一日より始まります。二日目の月は繊月や二日月と呼ばれ、ちょうど月の満ち始めとなります。私は、旧暦の二日にお灸をするという行為は、月が満ち始めて気血が潤滑に流れ始めて充実に向かい始めた時に、お灸をすえて陽気を高めて効果的に気血をめぐらせ、そして生化を助けて、効率的に満ちさせようという所より来ているのではないかと考えています。

皆さん、旧暦二日には、おきゅうおしましょう!